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除夜謎2020 4月-3制作者の裏話とか【麦茶専用】

謎解き界隈、特にTwitter謎解きでの一大イベントに「除夜謎」というものがあります。
除夜の鐘にちなんで大晦日に108問の謎が出題されるイベントです。
発起人はRickさんと水無月さん。
めっちゃ民営。

2017年から始まり、今ではすっかり年末の風物詩となっているイベントです。
歴史や詳細については謎解きWiki参照。

私がこのイベントを知ったのは2018年のことで、一枚謎が大好物な私はすっかりファンになりました。
2019年には制作者の公募があったので参加しようかな……とも思ったのですが、受験があったので見送り。

そして2020年、今年は除夜謎あるのかな……などと考えていると、なんとディレクターのdriving先輩から直々にオファーを頂きまして、制作陣営として参加することになりました。
サイトはこちら。

個人制作以外の形で(とはいえほぼ個人制作なんですが)ディレクター存在下で作品を出すのは初めてだったので、この記事ではその経験談を備忘録的にまとめていきたいと思います。

なんでこんな記事を書くのかということですが、それは単に「時間をかけて作った一枚謎ができるまでの過程って面白い」と私が思っているからです。
モノづくりの裏側って興味深いじゃんか。

テーマに沿った謎制作の面白さ

先ほどリンクを示した謎解きWikiを見ていただくと分かりますが、除夜謎には「月ごとのテーマ」があります。
テーマを制定することによってより作者の個性も引き立ちますし、企画にメリハリが出ます。

私が配属された4月のテーマは「写真」でした。
実際に撮った写真をもとにして謎を作る、あるいは現実世界に作った謎を写真に収めるというものです。
普段、謎解きの画像はPowerPointのようなソフトウェアで作ることが多いので、それとは異なるアプローチが必要になります。

また、テーマをただ満たすだけでなく、テーマを満たすことで面白さが引き立つ謎を作る必要があります。
例えば、メモ用紙に何の変哲もない一枚謎を書いてそれを写真に撮れば、「写真」というテーマを満たした謎にはなります。
しかし、それでは「写真」というテーマである必要性が全くありません。

テーマを活かしつつ、オリジナリティがあってしっかり面白い謎を作るにはどうすればよいか……
そんなことを考えながら企画に提出し、公開されたのがこの謎です。

答えはこちら。

何か私のシルエットが見える

個人的には非常に良いものが出せたと思いますし、また周りからの評判も上々だったので満足のいく結果となりました。

では、この謎が完成するまでの経緯を書いていきたいと思います。

写真謎ができるまで

写真謎にもいくつかのタイプがあります。
(このことは事前にdrivingさんに示されていました。)

小道具を利用するもの。

風景に溶け込んでいるもの。

スクショ。

このうち、私は小道具を使うタイプのものにすることにしました。

物理現象や自然に存在する事象、日用品などをそのまま使うタイプの謎(ピタゴラスイッチをイメージしてもらえると分かりやすい)が好きなので、実写にするのであれば何らかの「もの」が期待通りに機能するような謎にしたいなー、と思ったからです。

大体の方針が決まったら、まずはダイコクドラッグ百万遍店の2階の100円ショップに向かいます

100円ショップは雑貨がたくさんあるのでアイデアの源になります。
案が出ない時はとりあえずぶらついてみたり。
(気づけばいつ使うか分からないアイマスクとか買ってる)

んで、食品用容器のコーナーに来ました。
ドレッシング入れるやつとか米入れるやつとか、透明なプラスチック容器がいっぱいある。

そこでふと過去に作った一枚謎を思い出しました。

かつて謎の一枚に投稿して大好評だった作品。

答えはこちら。

他にいい単語が無かった。

この謎はひっくり返すという「ケチャップの容器に期待される機能」が働き、なおかつケチャップがかぶさった部分の赤い線は見えなくなるというう「自然な現象」によって答えが出る謎です。
結構お気に入り。

そしてこれは「写真にすることで映える謎」です。
実際のキッチンにケチャップを置けば生活感も出て、日常に謎が存在するオモロな風景っぽくなります。
この方針で行くことにしました。

では次に、なぜ今回テーマを麦茶の容器にしたのか、についてですが……

大きな理由のひとつは、ちょうど一人暮らしを始めたタイミングだったのでお茶を入れる容器が欲しかったからです。
ペットボトルのお茶ばっかり飲んでると割高ですし。

あとは予算の都合とか難易度の関係ですね(記事的にはこっちが重要)。
「アルカリ性の液体にフェノールフタレインを加えて……」とかも考えたんですが、やっぱり多くの人の目に触れる企画なので馴染みがあるものを使いたかった。
フェノールフタレインを使った謎はのちに別の場面で登場することになる

使うものが決まれば後は実装だけです。
麦茶の容器に書いてあっても違和感のない言葉として「麦茶専用」を選び、画を抽出して作れる言葉を探します(「麦茶」から「コタエハ」が拾えたのは結構ラッキーでした)。
麦茶に隠れても見える色と消える色を選び、紙に書いて貼り付けて取る。
あとは画像加工で見やすく。
除夜謎では問題文が1行設定できるのですが、あくまで日常っぽさを強調したかったので「答えは○文字」とか「浮き出てくる文字を~」とかではなく「ちょっと待ってね」と言う程度にとどめました。

ちなみに解答の画像は本当に問題画像の時間経過後です。
説明文を長めにして加工で解説するという手もあったのですが、写真を撮ってみるとまあまあちゃんと見える感じでしたし、drivingさんにも「本当に麦茶を入れてほしい」的なことを言われたのでこだわりました。

「色」の難しさ

さてこの謎、尊敬してる色んな方々からお褒めを頂きましたし、自分でも満足のいく出来だったのですが、ひとつ反省点……というか謎制作の難しさを感じる部分がありました。

それは「」です。
色の情報はかなり受け手の感度や感覚に依存する部分があり、個人差が大きく表れます
そのため、企業の謎解き公演などでも色を用いる場合は事前に注意がなされます。
例えば、「『色』を使った謎がたくさん登場する」と明言しているタンブルウィードさんの「謎まみれ2」では、ホームページにあらかじめ「色の識別が困難な方はお楽しみいただけません」とはっきり書いてあります。

見ての通り、私の麦茶の謎は微妙な色の差異を利用するものです。
また、写真なので光の当たり方などの影響で同じ色が違って見える場合もあります。
解く人のディスプレイの設定やかけている眼鏡の影響も受けます。
これが最大の難点でした。

ただ、これを無理に克服しようとすると謎そのものの面白さが失われてしまうのも事実です。
色々考えた結果、色を文字記号で表した画像へのリンクを貼っていただくことにしました。

苦肉の策。

この対策が役に立っていたなら幸いです。
一言コメントで大喜利したかったな……

実際にYouTubeなどで配信を見ていると問題画像の方はあんまり問題なさそうなのですが、解答画像が見づらかったりするみたいですね……

商業的な作品を作るのであれば、この辺の利便性も考えてシステムを組んだりする必要もあるのかな……などと思いました。
これがアートとデザインの違いのひとつなのかもしれない。

こういったことも含めて色々勉強になる制作体験でした。
なにより楽しかったし、除夜謎で自分の作品が出て色々感想がもらえたことが嬉しかった。

除夜謎は多くの人が無償で動くイベントなので管理の手間や制作のエネルギーも膨大なものだと思います。
なので今年も同じような除夜謎が開催されるとは限りません。

ですが、この除夜謎は間違いなく私が最も好きなイベントのひとつです。
内側からでも外側からでも、今後も応援していきたいと思います。