「虚無謎」は謎解きにおけるひとつの結論である
「虚無謎」をご存知でしょうか。
2020年に謎制作団体ハードナッツ(公式ホームページ)のメンバーによって発明された謎解きの一種です。
現在は様々なタイプの虚無謎が存在していますが、最もベーシックなものは一枚謎の中に「虚無」という文字列を織り込んだもの。
そしてこの虚無は「虚無」という単語ではなく、本当の無として扱われます。
言葉で説明しても伝わりづらいので具体的な例を見ていきましょう。
まずは普通の一枚謎から。
慣れた人なら「あぁ、このパターンね」となるような、よくある一発系の謎です。
「か」が「ど」の中にあるので「かinど」、つまり答えは『カインド』。
では次に虚無謎。
解き方自体は先ほどの「カインド」と同じです。
「虚無」が「ど」の中に入っているので「虚無inど」……
しかし、虚無謎において「虚無」は無の概念そのものを示しています。
つまり「虚無」は「 」に変換されます。
よって「 inど」となり、答えは『インド』になります。
何となく伝わったでしょうか。
言い方を変えると、「虚無」を単語として認識したまま謎を普通に解き、その後「虚無」という文字列だけを消去することで答えが得られるものが、現在広く虚無謎として認識されているものなのです。
以下、代表的な虚無謎と自分の作品です。
さて。
この虚無謎は、謎解きの「暗黙の了解」に基づいて作られていると言ってもいいでしょう。
上の『インド』の謎は、『カインド』の謎の解き方を知っているから解ける謎です。
回りくどい言い方をしますと、『カインド』に似たタイプの謎の解き方を知っていることによって『インド』の謎を見たときに「二つの文字がどのような位置関係にあるのか」が重要だということを推測でき、それを虚無謎の解き方に当てはめることで初めてスムーズに解くことができるのです。
つまり、虚無謎を解くときには虚無謎に慣れており、かつ既存の謎の解き方をある程度知っていることが重要になると言えます。
今度は虚無謎を作ることを考えてみましょう。
この場合も、既存の謎、特に判じ絵や矢印による法則謎のように「ある情報を変換することで答えが生まれる」謎がある程度意識されます。
この時、「ある情報」はいわば変数のようなものとして扱われ、「変換」は関数のような扱いになります。
この変数に「虚無」を代入することで、『インド』のような虚無謎が生まれます。
虚無謎を作る際に代入できるものは「虚無」という極限まで具体的な情報が削ぎ落とされたものだけなので、作る側も解く側も「どのようなギミックが存在するのか」「どんな変換がなされているのか」ということをより強く意識することになります。
これが、タイトルにあるように「『虚無謎』は謎解きにおけるひとつの結論である」と僕が考える理由です。
一枚謎には明らかにパターンが存在します。
いわゆる「ベタ問」みたいなテンプレートが存在して、そこに色んな要素が付け加えられたり破壊されたりすることによって多種多様な謎が生み出されているのです。
どんな独創的な謎であっても、その基礎になっているベタ問はどこかに存在する……と私は考えています。
(パクリとかそういう話ではありません。創作ってそういう風にして発展していくもんだと思います。)
そしてその謎が虚無謎になりギミックや変換が意識されるようになると、これらのパターンが明瞭に見えるようになってきます。
つまり、謎の核となるパターンに最低限の味付けのみをして提供できるのが虚無謎なのです。
このように、謎の核の部分を直接見せる虚無謎はそのパターンにおける特殊な形であり、これがひとつの結論=行きつくところまで行ってしまった形になっていると考えます。
(もちろん唯一の結論ではないと思いますが)
我々はどこまで行くんだろう……
とはいえ、最近は上記の説明に当てはまらないようなタイプの虚無謎もたくさんあります。
Twitterにあがっている具体的な例を引用させていただきますと
他にも、M-1グランプリ2020の決勝の東京ホテイソンの漫才のオチが虚無謎だとか言われてましたね。
今なら公式YouTubeで観れると思うので是非。
このように、確実に謎解きの世界に新しい風を吹き込んだ虚無謎。
慣れが必要な部分もありますが、これからも様々なタイプの虚無謎が生まれて小謎の定番になってくれたら面白いな~、と1ファンとしては思うわけです。
ではまた。