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「漢字の読み方」って結構曖昧じゃないですか

おはようございます。

最近、趣味で漢字の勉強をしていたりします。
そのなかで大きな割合を占めているのが漢字の「読み方」を答える問題。
単漢字や熟語がポンと出されてその読み方を仮名文字で答えるという、クイズ番組とかでよくある問題です。

そして、この手の問題は大きく2種類に分けることができます。

一つ目はシンプルに漢字が難しいタイプ
例を挙げると「吝嗇(りんしょく)」とか「燦燦(さんさん)」とか。
普段生活する上ではあまり見ることがない漢字ですが、辞書を引くとちゃんとその読みとして載っているようなものです。
形声文字なら漢字を知らなくても読みを推測できたりします。

二つ目は知ってる漢字に難しい読み方があるタイプ
「腸(はらわた)」とか「鉄(くろがね)」のように和語に漢字をあてたものであったり、「海豚(いるか)」とか「無花果(いちじく)」のように、動植物の名前に当て字をしたものであったり。
中には「そんな読み方/書き方あるんかい!」「誰がそんなの決めてんねん!」とツッコミを入れたくなるようなものもあります。

もちろんこの2タイプで明確に線引きできない問題もあるけどね

読み方って誰が決めてんのさ

さて、この「誰がそんなの決めてんねん」というツッコミは野暮にも思えますが、わりと考えてみる余地のある疑問だな、と思います。

漢字の読みを大雑把に分けると、音読みと訓読みの2種類あります。
雑に言うと音読みが中国から漢字とともに輸入された読み方で、訓読みはもとから日本にあった言葉を漢字にあてがった読み方です。
本当は呉音やら漢音やら色々あってややこしいけど今回はそこがメインじゃないからスルーします。詳しい人にはツッコまれそうだけど……

つまり、訓読みはすべて当て字だと言ってもいいわけです。
「米」を「こめ」と読むのも「rice」を「こめ」と読むのも、外来語に日本の言葉を当てはめているという点では同じわけです。
長い日本の歴史の過程でその読み方が定着したから、今の我々は当然のようにそれを「正しい読み方」だと思って実際にすらすらと読んでいるわけですね。

では、この「定着した」とはどのような状態を指すのでしょうか?
多くの人が使ったらいいのか、公的に決まればいいのか、辞書に載ってればいいのか……
これは場面によってさまざまで、色々な例が存在します。

ひとつの基準は文化庁が出している「常用漢字表」です。
これは一般に使われているいわゆる「常用漢字」を定めるもので、音訓に関する記載もあります。
もちろんこれはあくまで目安として提示されているものであって漢字利用について制限するためのものではないですが、例えば学習指導要領ではこの常用漢字を基準として漢字の学習が進むことになっていたりするなど、普遍的な基準として役立っています。

他に「大漢和辞典」が基準として利用される場合もあります。
5万字・53万語が掲載されている世界最大クラスの漢字辞典です。
欲しいけど高いんじゃ~

つまりどういうことかと言いますと、漢字の読みを問題にするときは出典となる範囲が重要だということです。

例えばQuizKnockさんの漢字一文字でしりとりをする動画では、読みの判定基準として「漢検漢字辞典に掲載されている」「十分使用例がある」という基準が明示されていました。

「十分使用例がある」は曖昧だけどまあこういうゲームなら文句ない基準でしょう


ところで、実際にテレビで放映されているクイズ番組ではあまり出典のようなものが明示されている印象がありません。
まあ裏ではちゃんと調査していたり漢字クイズの「ベタ」のようなものが共有されてはいるんでしょうが、たまに「そんな外来語が?」とか「それ漢字の読みというかもはや中国語の意味では?」みたいなものもあったりするので、できるだけ示してくれるとありがたいのになあ……という気持ちで見ています。

今からでも新しい「読み」を作れる説

定着すれば「読み」になるという話をしてきましたが、定着した年代も漢字・熟語によってさまざまなようです。

例えば「鰉」は「ひがい」と読む魚の名前ですが、これは明治天皇がこの魚の一種を好んで食べたことに由来するとされています(出典:日本大百科全書)。
いや百科事典は出典としては弱いんだけど
つまり江戸時代以前にこの読みは存在しなかったわけです(漢字自体は前からあったようです)。

それなら極端な話、今からでも新しい読みを作って普及させれば、将来的にそれが「正しい当て字読み」として認識されてクイズ番組などで出題される可能性があるわけです
小説のタイトルや楽曲の歌詞に使われているような「なんやそれ」感ある当て字も、何かのはずみで市民権を得るようになれば正しい表記になってしまうわけです。
ゆるい世界。

辞書登録してないのに

[blogcard url="https://www.nicovideo.jp/watch/sm3945173″]
こんなのもあります

 

こんな感じで、漢字や熟語の読み方というものは結構ゆるゆるとした決まりで成り立っているんだなあということが分かります。
まあ常用漢字表にしても漢字字典にしても「こんな用法がありましたよ」ってのを集めてまとめられているものなので、広げようと思えば範囲はどこまでも広がってしまうわけです。
漢字をきちんと勉強したいときや、納得感のある問題を作りたいときは、その読み用法がどのような出典から定められているのかということを意識した方が良いのかもしれませんね。

ではまた。