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【感想】NF2025謎解きコンテンツ総括

こんにちは。

今回は、今年11/21~24に開催された第67回京都大学11月祭(通称:NF)内で実施された謎解きイベントの感想記事になっています。

今回のNFでは13個もの謎解きイベントが企画されました(参考)。
もはや中型謎解きフェスほどの規模であり、学園祭としては国内最多なのは言うまでもないでしょう。

私はその企画者のひとつENIG-ROIDに所属していますが、今回のNFでは主に制作に携わることもなかったため、(既プレイのものやデバッグ・テストプレイ段階での参加のものも一部ありますが)全ての企画にプレイヤーとして参加することができました。

ということで、各公演の個人的な感想を網羅的に本記事にまとめていきたいと思います。
(ネタバレの有無は、それぞれの公演がネタバレ解禁しているか否かに依ります)

それではレッツゴー

各作品の感想

NF謎解き観光2025年度決定版‼︎

ENIG-ROIDの周遊謎解きです(ネタバレ解禁済み)。
ビジュアルを見た瞬間に分かる通り観光ガイドを模しており、京都大学の各所を巡りながら謎解きをしていくというものになっています。
難易度は控えめで価格もお手頃と、初心者層へのリーチも意識しているようですが、各ステップがかなりしっかりと作られており、謎解きとしてはむしろ骨太と言って差し支えない出来となっていました。

本部~吉田南構内の普段あまり注目しないような場所を歩きまわるため、京大に通って6年になる僕でもなかなか新鮮に楽しめる周遊でした。
冊子のコラムが充実していたりと、コンポーネントの作り込みに妥協がないのもナイス。

エニグロ探偵事務所

こちらもENIG-ROIDの周遊で、上の謎解き観光の続きとなっている作品です(ネタバレ解禁済み)。
無事に観光謎解きを終えたあなたに依頼が届き、新人探偵として研修しよう、というような感じ。

難易度はやや高く、ホール型公演の大謎のような大掛かりなひらめきを要求されますが、諸々の誘導の仕方やステップの刻み方が丁寧で、それでいて各所に笑える展開もあるバラエティ豊かな周遊でした。
ステルスアクションもどきや店舗裏への突入など、ここでしかできない体験が多いのも魅力。
今回のNFでの一番のお気に入りと言ってしまってもいいかもしれません。

こういう公演作ってみてえな……

クレープクリエイター

ENIG-ROIDのカフェ謎で、周遊などの受付や物販を行っていた部屋で座って遊んでいけるものでした。
非常にライトな謎解きですが、その中にも謎解き特有の驚きがあったり、最後の展開が綺麗だったりと、自信を持ってオススメできるコンテンツかなと思います。

こういう趣向のものを作ろうとすると過度に複雑になったり、それを避けようとすると物足りなくなったり……ということがよくありますが、今回は演出も含めて良い落としどころだな、と思いました。

見た目も可愛い謎解きが15分程度でできるということで集客も良く、土日にはENIG-ROIDのブースが家族連れで賑わっている瞬間も。
弊ブースの交流に幅を持たせたという観点から、この企画の存在自体の偉さも感じます。
まだ色々と学ぶものがあるなと思いました。

京大異常現象対策科

ENIG-ROIDのホール型公演です。

ENIG-ROIDに詳しい方ならよくご存じかもしれませんが、制作指揮は過去に『エグミ公国からの脱出2』や『エグミワールドからの脱出』のディレクターもしていた方で、今回もその要素が色濃く出ている公演になっていました。引退詐欺
とはいえ制作隊には新顔も多く、バランスの良い新作として位置づけられるのかな、と思います

学祭という、普段よりも少し自由でやりたい放題できる場所にて話を広げながらもしっかりとした大謎に落とし込んでいく。
ここまでに紹介した謎解きよりは幾分か複雑ですが、謎解きの持つロジカルさ・ファジーさの両面から詰めていくのが気持ちいい公演でした。

Guest in Puzzle Land

ENIG-ROIDとパズル同好会のコラボ企画です(ネタバレ解禁済み)。
ペンシルパズルを解くことで脱出できる空間、しかし一筋縄ではいかず……という形のものでした。
簡単な盤面でのしっかりとしたインストラクションから始まり、試行時間もたっぷり与えてくれるので、じっくり緩やかにパズルと向き合うことができます。
登場するパズルは「ましゅ」「クロスワード」「さしがね」の3種類。

個人的には贔屓のパズルであるところの「さしがね」が大フィーチャーされていて嬉しかった
最後のギミックも、謎解き的観点から見ると大胆な、パズル的観点から見ると繊細な作りになっており、解き進める際のインパクトが大きかったです。
あまりパズルを「イベント」として体感したことはありませんでしたが、非常に遊びやすい形に仕上がっており、良い形式の発明だなと思いました。

なお、パズル同好会オリジナルの企画の方では毎年恒例の会誌販売が行われており、そちらも購入しました。
絵むすびのロジカルな解き方に気付いてハマっています。

ココロディレクトリ

ナゾトキノコの、NFでは久しぶりにして最後の公演になります。

ある女性の情報を読み解きながら核心に迫っていき、そして最後は自分自身で……というもの。

重厚なストーリーに謎解き的手法で迫っていく形で、物語が苦手な自分でさえも気が付いたときにはお話の中の主体になって行動していました。
それゆえにクリアした際の気分は晴れやか。
ナゾトキノコの公演は過去に2度ほどお邪魔したことがありますが、その時も同様のマジックを受けて感心した記憶があり、この団体の唯一無二の色なのだと思って推しております。

10周年という節目のタイミングでNFに来ていただけたのが非常に嬉しいです。

ALTERAID

ハードナッツのホール型公演。
読みは「オルタレイド」です。

作り込みが凄いビジュアルからも分かる通り、普通な学祭謎解きとは一線を画す高クオリティなゲームとなっていました。
近年のハードナッツは非常に高いデザイン力・技術力を用いて最高のゲームを実現してくれることが多く、ALTERAIDもその流れを汲んだ公演ですが、その中でも特に僕の好みに合った作品だと感じました。
難易度がそこまで高いわけではないですが、登場する謎がひたすら面白く、システム面と併せて純粋に感心させられる場面が多かったです。

むしろ、「謎解きは好きだけど公演参加の経験はあまり……」というぐらいの人に薦めたいぐらいの、バランスの良い作品なのかなと思います。

CRY FOR THE MOON

ハードナッツの周遊謎です。

所要時間2時間超と、今回のNF謎解きでも最大級のボリュームとなる作品ですが、随所に遊びやすい仕掛けが施されているうえ、演出やコンポーネントの面でも楽しい部分が多く、磨き抜かれた良作になると感じました。

学園祭の持つ非日常の空気を最大限に引き出してくれるこの周遊は、名高い『秋めぐる君と一葉』『茜色の残り香』の系譜(あるいは『黄昏と京の足跡』『Q.秋風の文化祭』からかもしれません)に位置付けられる作品だと思いますが、これらの作品の良いところを継承しながら新しい試みもあり、過去イチ盛り上がった今年のNFを引っ張ってくれたのは間違いありません。

今までハードナッツの周遊はNFの花形として語られてきましたが、それが単なる偶然によって生み出された奇跡などではなく、しっかりと継承された職人技であることを証明してくれたと思います。

ROTATE

ハードナッツの待合室コンテンツです。 ALTERAIDの隣の部屋でやっていた、20分未満でサクッと楽しめるコンテンツの1つ。

いわゆるスコアタ謎解きですが、「ROTATE」のタイトル通りのコンセプトで、楽しいシステムで謎を解き荒らしていくことができます。
こういった楽しい遊びとして組み立てられた謎解きは最近のハードナッツの魅力的な側面のひとつだと思っており、ROTATEはその代表格として一枚謎が好きなあらゆる人、特に後輩たちにオススメしたい作品でした。

なんでもコールセンター ~ベテラン業務編~

同じくハードナッツの待合室コンテンツですが、僕は既プレイだったので今回は眺めるのみで。

現時点での最高記録であるところの2830ptsはまだ破られていないようで安心しましたが、個人的にはあまり上手い解き方ではなかったと思っているので、理想的なムーブで打ち抜いてくるプレイヤーが現れることを勝手に期待しています

テンコちゃん信仰プロジェクト

きりんぐたいむに象の群れ(団体名)による周遊謎です(ネタバレ解禁済み)。

周遊謎ではよく見かける、折って色々導けるシートを主軸に据えた謎解きという感じでした。
お手軽なワンアイデアものではありますが、その中でも様々に展開していき、最後は結構難しい思考の組み立てを求められます。
「100円以上のお賽銭で参加可能」という制度や教室の立地の良さもあり、今回の目まぐるしいNFをちょうどいい位置から回してくれました

隠しパート(本編?)の部分は(コアの部分は自力で解けましたが)人に言われて初めて精査して気付けたのでここは反省点かもしれません。
そういえば終わった後めっちゃ「今日中に読め」と言われていた。

続きの物語とされる「あの火の」も、今作以上に気合いが入っているものと思われるため期待を大きくしています。

クスノキが枯れた日

本当に彗星のごとく前情報無しに現れた団体、Team.KusuNoKiによる周遊謎です。
特に謎解きにルーツを持つわけではない4人からなる制作チームが、謎解きやマダミスを遊ぶ中で自分たちでも作りたいと思って制作・出展してくれたとのこと。
今回のNFで1番の衝撃かもしれません。

周遊謎と1人用マダミスが合わさったような構成で、いわゆる「謎解き」に限らない部分もあり、新鮮に目に映る作品だったように思います。
推理の部分はかなり正統派でボリューミーであり、腰を据えてじっくり考える時間が楽しかった。
ストーリーも奥行きが深くて京大・NFらしさもマシマシ、登場人物同士の関係性や舞台設定などが想像以上に作りこまれた力作でした。

個人的に驚いたのは、冊子やアイテムなどのしっかりとしたデザインです。
未経験からの初挑戦だとあまり手が回らない部分だと思うのですが、どのように進行すべきかが非常に分かりやすくなっていたり、各ページが世界観に合った構造になっていたりと、この部分でのストレスを感じることがほとんどなかったように思います。
謎や導線に多少粗さは見られましたが、プレイ後感はすっきりとしており、総じて良い作品だと感じました。

来年も出展するかも、とのことですので、楽しみに待っていたいと思います。

NF★謎解き

NFウェブサイトで検索したら出てくる謎の謎です(分類上はオンライン展示らしい)。
ちゃんとNFのために作られた、真っ当に解ける謎解きでした。
何者だったんでしょうか。

まとめ

以上、13作品のレビューでした(見逃してるものがあったらごめんなさい)。
いつもの2団体に加え、久しぶりの出展団体や第三極の登場など、非常に盛り上がりの大きいNFとなりました。

過去のブログ等を調べる限り、今年の謎解き出展数はやはり過去最高のようです。
「何かを感じて狂ったように謎を作っていた」とまで称され、実際に翌年からコロナウイルスの影響で中止・縮小となり、リアルタイムで経験していない我々からは文字通り伝説のように聞かされていた2019年のNFに追いつけたのかもしれませんし、もしそうであるならばこれは非常に象徴的な出来事なのだろうと思います。
(2021年で全てが消え去るパターンもあり得ましたので……)

少々気合いが入りすぎていたようにも思えるため、来年以降がどうなっていくのかはやや不安ですが、361日を学生として過ごしそして生まれ育ったものを年に一度披露する、この機会を全力で楽しむ気持ちがある限りはまだまだ期待ができると思います。

ではまた。