謎解き日本一決定戦 – 決勝大会進出者の思考回路④【脱出謎解き編】
おはようございます。
本記事は先日放送された「謎解き日本一決定戦Χ 2023」の決勝大会出演者が自分のプレイングやその意図について解説していく記事となっています。
連続する記事の4つ目になるので、前の記事を読んでいない方はそちらから続けて読むことをオススメします。
以下、番組のネタバレを含みます。ご注意ください。
セカンドステージ・脱出謎解き
4人に絞られて臨んだのがこの「脱出謎解き」。
この場でしか味わえない特設の公演に胸を躍らせる一方で不安もあります。
ここまでの謎解きは特殊なギミックがありつつも、単語を書いて解答を提出するクイズ形式であることに変わりはありませんでした。
しかし、今回はついに脱出。
動きを伴う謎であり、解答提出にも何かしらの工夫が施されているはずです。
答えを出すことさえできればいいタイプの謎であれば僕は月間1000問ほど解いているのですが、部屋が用意されてそこで何かアクションをする、いわゆる「謎解き公演」型のゲームは生涯通算100ほども経験したことがありません。
また、部屋に閉じ込められると当然他の人の進捗は見えなくなります。
ここまで他者のスコアを常に意識しながら勝ち残ってきた僕にとって、道標を取り上げられたも同じです。
結果として1番目の部屋で大幅にタイムロスをしてしまい、このラウンドで敗退することになります。
現場のコンディション
放送では見やすい編集がバチバチになされていましたが、現場のルールや状況の説明が結構端折られていたのでなかなか伝わっていない部分もあるかと思います。
ここでは諸々の種明かしをします。
- 4人同時のダービーのような形式で放映されていましたが、実はあのセットは2つしかありません。
前のステージで上位だったすいとんさん・ちーたーさんと下位だった僕・おいたくさんが2組に分けられ、2回にわたって撮影された後に合わせた編集が行われた模様です。
僕の組が後半だったので、待ち時間が結構ありました。
- 控室とは異なる楽屋まで案内され、そこでピンマイク・イヤホン・アイマスクを着用しました。
何も見えなくなった後、スタッフさんに手を引かれて部屋まで案内され、閉じ込められます。こわい
- 3つの部屋の呪霊を倒すこと・倒すべき呪霊が壁に描かれていること・呪霊にお札を貼ればいいことなど、放送では部屋の紹介映像+文章で説明されていたルールは、イヤホンから流れてくる音声のみでまとめて伝えられました(もちろん目隠しをした状態)。
ただ、お札を貼って間違えるとペナルティがある……という部分だけは事前にスタッフさんから口頭で伝えられていました。
- 部屋の側面のうち3面は脱出ゲームの壁・ドアでしたが、1面はカメラや照明が覗き込めるように解放されていました。
- ゲームが開始すると、イヤホンからは音楽が流れ始めます。
すぐ隣に脱出のセットがもう一つあるため、音漏れ防止の措置です。
- 実はカンペがあります。
といってももちろんネタバレとか行動の指示とかをされるわけではなく、現在の状況説明(「間違ったお札を貼ったので30秒のペナルティ」など)がメインです。
また、(取り返しがつかないレベルで)一定時間が経過するとちゃんとヒントが出ますが、〇分経過で1つと明確にルール定められており、公平なもの(スタッフの匙加減での順位変動は起こりえないもの)になっていました。
イヤホンのせいで何も聞こえず、カンペがないと永遠に部屋に囚われたままになる恐れがあるので……
部屋での一挙手一投足
さて、いよいよ本番です。
放送ではカットされていましたが、僕はこの部屋の中でかなり奇妙な行動をとっていた自覚があります。
それはもう、クリエイターと編集スタッフに申し訳ないぐらいの……
ゲームスタートと同時に、アイマスクを取れという指示があります。
僕は指示通りアイマスクを取り、同時にイヤホンを落としました。
イヤホンは取るなと言われていたので結構慌てましたが、すぐスタッフさんに付け直してもらい(脱出とはいえその辺の行き来はすぐできる状態)リスタート。
壁の謎を解きます。
スタジオでの解説の際、藤本さんが「分かるかぁ」と突っ込んでいましたが、これ本当に難しかったです。
冷静に処理すれば理詰めで解けるとはいえ、画面で見るのと壁面で見るのとではやっぱり印象が変わってきますし、それを立ちながらメモして解くとさらに勝手が違ってきます。
ここの謎を中程度の時間で突破(解けたタイミングはおいたくさん・ちーたーさんとあまり差がなかった気がします)。
しかし、あろうことかお札を壁のイラストの方に貼ってしまいます。
部屋に怪しげな人形があることは分かっていたのですが、この時点での僕は慣れない環境でかなり正気と冷静さを欠いており、人形=呪霊という事実に気づけていません。
壁の「以下に描かれた呪霊たちを全て倒せ」という文言を見て、「この絵になんかすりゃええのかな」と思い込んでしまいました。
そして、ここで(謎がちゃんと解けているにも関わらず)誤った場所にお札を貼ったため、30秒解答不可のペナルティを喰らいます(カンペもペナルティについての言及のみでした)。
このペナルティを受けたことにより、実際は貼る場所を誤っていただけなのにもかかわらず、貼るお札が誤っていたのだと勘違いしてしまいます。
解き直しの時間だ。
ここで結構な時間をかけて解きなおしをするのですが、当然新たな答えは出てきません。
ハナから合ってるんだから。
その間に他3人は全員3番目の部屋に到達してしまったようです。
しばらく頭をひねった後、ようやく「人形にお札を貼ってください」のカンペに気づきます。
あ~~~~~ 終わった~~~~~
僕以外誰もしないであろうタイムロスを踏んでしまっていたことに気づき、絶望しながらお札を貼り直します。
放送された映像で、僕だけお札を取り出した場所がおかしかったのはこのせいです。
もう負けただろうと思いながら次の部屋に進むと、逆さまになったカタカナが目に飛び込んできます。
「カゲのカゲだ……」と2秒ぐらい(誇張なし)で理解できたので、また逆転の希望が見えてきます。
やる気を取り戻してお札に目をやると、「影」の文字がない。
その代わりに目に飛び込んできたものを見て、僕はニンマリしてしまいます。
野村一晟さんのアンビグラムがある!
僕はアンビグラムが大好きで、一時期は自分でも高頻度で制作をしていました(参考記事)。
最近も作家の方のTwitterをよく追っています。
文字の雰囲気を見て流石にこれは野村さん(かその教え子)監修の作品だろうと直感的に理解し、アンビグラムと謎解きの綺麗な融合を見て感動(しながら爆速でお札を上下逆にして骸骨に貼って2つ目の部屋を突破)しました。
自覚はなかったですがこの時点で他の参加者に追いつき、ダービーをかなり盛り上げていたようです。
見せ場になって良かった……
そしてついに3番目の部屋。
呪霊を殴れと書かれていたので呪霊の文字に静かなパンチを決め、やることを理解します。
が、格子の突破方法が分からない……
ここではしっかりRIDDLERの罠に引っかかっていきます。
格子にもひっそり文字が書かれていることに気付けるかどうか、というのがポイントなんですが、奥の鎧を確認しようとするほど格子に近づき文字が見えなくなるという絶妙なバランス……
ここからの行動もまあまあ変でして、「月」のお札を床に張り付けたりしていました。
これは
「最初の絵に『以下に描かれた呪霊たちを全て倒せ』とあるなあ」
「じゃあ、この文章の下にいるのが呪霊なのだなあ」
「下方向には床があるなあ」
「床も呪霊なのかなあ」
「実は鎧と床は繋がった巨大な呪霊であって、床にお札を貼ったら床ごと倒せるかもなあ」
という発想によるものです。
実行したところ静かに30秒のペナルティを喰らいました。
このあたりで他の3人がクリアしてダービーは打ち切りに。
僕はこのあともものすごい時間をかけ、カンペの助けも得ながら格子に「兄」が見えることに気づき、1つ目の部屋で「呪」のお札を発見してまた格子に戻り、ここで口へんの存在に気づいてから格子を倒してゲームクリアしました。
いやはや。
敗因
ここでの僕の敗因はひとつ。
情報の整理ができていなかったことに尽きると思います。
事前説明が音声のみであったこと、急に部屋に放り込まれて慌ててしまったことなど、序盤でのスタートダッシュに失敗し、冷静になっていれば回避できたはずのタイムロスをしてしまったのが非常にまずかった。
ファーストステージ・セカンドステージ前半では落ち着いた分析を武器にした立ち回りを行っていただけに、ここでつっかえてしまったのは非常に悔しいです。
とはいえ、ここで行動選択を失敗してしまう人間に「謎解き日本一」の称号はふさわしくないと思います。
勝ち抜けた3人の強さはここまでの勝負を見ても明らかで、もはや彼らに勝つ方法は思いつきません。
敗退直後でさえ「あのなかの誰かが日本一になる」という事実を100%肯定できたと思います。
ちょっとした裏話
- おいたくさんと一緒に案内された控えの小部屋には防災用の設備があり、その使用方法の説明文がいかにも謎解きで使う物理ギミックみたいだったので「ここが既に脱出の部屋なのでは?」とか言いながら待ってました。
もうちょっと待ちが長かったら即席で1公演できてたやもしれぬ - 最初にお札を絵に貼るという行動があまりにも不審すぎたようで、収録直後にRIDDLERの渡辺さんに呼び出されてそこの釈明(ルールを勘違いしていただけで、なんか変にショートカットしようとしたわけではないという旨の説明)をしていました。僕もクリエイターの端くれなので何となく分かりますが、本番であんな行動されたら焦っちゃうよね
- 本番のスタジオでは4人とも脱出終了→解答者席に移動→松丸さんによる解説→全員の映像をノーカットで見る、という順番でした。ノーカットの映像は放送された映像の倍ぐらい白熱していて面白かったです。とはいえ結構長時間かかっていたので、敗退を察してそこに座り続けるのは流石にちょっと辛いものがあった
- 負けたとはいえ、僕はテレビ番組特製の超プレミアム公演を最後まで体験出来て結構満足していました。
敗退後には帰宅シーンの撮影があったのですが、ここまでお世話になったスタッフの方が並んで声をかけてくださったので、充実した気持ちでお礼を言いながらスタジオの玄関まで移動したところ、そのシーンは一切使われませんでした。
もうちょっと悔しそうに敗退した方が良かったんだと思います - 退場した後、交通費の調整をするためにスタッフさんと話してたのですが、どうやら僕がアンビグラム好きだということは伝わってたようで、このステージで敗退したことを残念がってくれていました。
ここで「野村さんの作品ですか?」と聞いてそうだということを確認しました。 - ここまで残った4人全員、アウターが緑色でした。
- 敗退後、応援席の高井茅乃さんと合流して会場を後にしました。
この時鳥貴族に行く話が出たんですが、その日残っていた文字を確認すると「鳥貴族には入店できるが注文できるメニューがない」という状態だったので結局行きませんでした。
なんの話題か分からない方はこの話はスルーしていただいて大丈夫です
最後に
ここまで、本大会における僕の行動をかなり細かく説明してきました。
4記事にわたる重いまとめとなってしまいましたが、放送・TVerでの配信などと合わせて楽しんでいただけたなら幸いです。
この間に他の参加者の方からも続々と収録体験記が公開されています。
同じ場・別の視点の話が非常に興味深く、僕も楽しく読ませていただいてます。
今回の大会は、制作陣の「参加者を楽しませよう」という気持ちが非常に強く伝わってきたように思いますし、滅多にない環境で貴重な謎解きの体験ができたことで僕もとても楽しかったです。
その分、2時間という放送時間内ではなかなか伝わっていない面白要素があったり、プレイヤーの複雑な駆け引きがフォーカスされづらかったりとむず痒い部分もあったので、本記事をもってそこの補足ができればいいな、と思っています。
来年はさらにパワフルな戦いを期待したいですね。
僕は多分卒論書いてます
ではまた。