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謎解き日本一決定戦 – 決勝大会進出者の思考回路②【AKI-MARU編】

2023年3月30日

おはようございます。

本記事は先日放送された「謎解き日本一決定戦Χ 2023」の決勝大会出演者が自分のプレイングやその意図について解説していく記事となっています。
連続する記事の2つ目になるので、まだ1つ目を読んでいない方はそちらから続けて読むことをオススメします。

以下、番組のネタバレを含みます。ご注意ください。

ファーストステージ2問目(AKI-MARU)

ファーストステージ2問目は、ロバート秋山さん扮する謎解きクリエイター・AKI-MARUからの出題でした。
ルールは以下の通り。

  • VTRのラストに謎が出題される
  • VTR途中にもヒントがある
  • 制限時間60秒

いきなり解答時間が始まった漫才謎解きとは異なり、前半のビデオを見る助走時間が用意されています。
とはいえ、ラストに出題される謎は1問目と同じく次第に情報が増えていくタイプのものであったので、基本的な戦い方は1問目と変わりません。

座席について

ここで、解答者席の仕様について軽く説明しておきます。

机の奥側にはVTR閲覧用のモニターが固定されており、問題VTRの閲覧や司会者席とのやり取りはこの画面を介して行われていました。
漫才謎解き以外の問題で解答者の顔が伏せがちになっていたのはこれが原因です(漫才謎解きはスタジオでの出題だったのでみんな正面を見ています)。

手元側にはタブレットとスタイラスペンが置かれており、これで解答を入力していました。
タッチの感度は良く、ストレスなく入力・解答することができます。

テーブルの右手側には解答固定用のLOCKボタンが置かれていました。
説明がなければおおよそボタンとは思えない小さい箱でしたが、そんなに力を込めなくても押すことができ、誤作動も特にありませんでした。

また、タブレットとは別に情報整理のためのメモ用紙と鉛筆・消しゴムが十分な数用意されていました。
事前に与えられた情報やVTRの情報はここに逐一書き留めていきます。

VTRを見て予測を立てる

映像が始まりました。

我々プレイヤーはどんな情報が後々必要になってくるのか分からないため、目に入ったものをとりあえず全てメモ用紙に書き留めていきます
僕は砂町銀座商店街・桜風鈴紅葉雪だるまといった情報をはじめ、映像に一瞬映った商店の名前すらも記録していたと思います(結局全然関係なかったんですが、そんなんあの時点ではわからんので)。
AKI-MARUの言動がなかなかフリーダムだったこともあり、この1問でB5サイズ程度のメモ用紙1枚を使い切るペースでした。
ちなみに番組で放映された映像は良い感じに編集されたもので、実際はあれよりも長いです。
その間ずっと気を張ってみていました。しんどい

情報量が多く、謎解きとは直接関係ないお笑いがふんだんに盛り込まれているというなかなかの暴れ馬ではあるんですが、VTR後半になってくるとなんとなく問題の方向性が見えてきます
購入したもの・持ち物がだんだんとクローズアップされていったので、ここにあるアイテムを利用した謎であることはほぼ確実。
メモ用紙も「いか 白い紙 はさみ えんぴつ はまき たいやき」という感じになってきます。

そして、「スイカ」と「酢」を立て続けに購入したことにより問題の方向性が明らかに
アイテム類を利用した謎には大きく分けて2つのパターンがあります。
1つ目はアイテムの性質を活かした謎解き
今回であればスイカを転がすとか、ハサミで何かを切断するとか、ギミック的なもの。
2つ目はアイテムの名前を利用した言葉遊び的な謎解き
持ち物の名前でのしりとりなどが該当します。

今、AKI-MARUの持ち物の中には「イカ」「酢」「スイカ」が存在しているため、アイテムの名前を利用することがメインになるのはほぼ確実
実際に「『酢』+『イカ』=『スイカ』」を例示として利用する謎解きだったのでこの予想は大当たりです。

ただ、この時点での僕は「AKI-MARUの最後の持ち物を当てる謎」だと予測しています。
具体的には、「AKI-MARUの持ち物の名前に使われている文字が全て神経衰弱のように対になっている(例えば『すいか・いか・す』で3つペアができる)ので、持ち物を列挙して文字のペアを消していけば最後の持ち物の名前が残る」ような謎を予想していました。
この形式は解答を出すまでにかなり時間を要するため、僕は焦りながらメモ用紙にひらがなで持ち物をリストアップしています。
これに気を取られているため、VTRでAKI-MARUがやたら焼き鳥に注目した言動を取っていることには気づいていません
これが結構なヒントだったので若干のビハインド。

そしてVTRが佳境(AKI-MARUが「葉」を拾うシーン)に入り、ここで僕は2つのことに気づきます。

1つ目は、「葉」の呼び方が説明されていないこと
今までは「スイカ」だとか「たいやき」だとか、各アイテムの名前が説明されていましたが、先ほどの葉っぱは何だとも言われていません。
「葉」とも「葉っぱ」とも「リーフ」とも解釈可能であるため、僕の考えていた文字ペアの謎解きとは非常に相性が悪いです。
そういえば「イカ」も「真イカ」だったりすることを思い出し、こんなに表記ゆれが多い名称で文字ペアをするわけがない!と判断してこの仮説を棄却しました。

2つ目は、「葉」が謎にとって重要な役割を果たすこと
AKI-MARUは「葉」を見たことをきっかけに謎を思いつきました。
当然謎には「葉」が利用されるでしょう。
葉巻とかもありますし、「は」と呼べるなら言葉遊びにも利用しやすそうです。

以上をまとめると、僕が出題開始前に立てていた予測は、

  • 「『酢』『イカ』『スイカ』」の関係を利用した言葉遊び
  • 「葉(葉っぱ・リーフ)」を利用する

というものでした。
もちろんこんな2つの箇条書きができてたわけでなく、ごちゃっとした思考の中でこれらを少し強く意識してたというぐらいのことなんですけどね

出題開始~17秒での解答

そして出題が始まります。
現場のモニターにも放送と同様にAKI-MARUの持ち物がイラストで表示されていました。
開始3秒後には「 + = 」という記号列が書かれたので言葉を組み合わせる謎であることは確定。
さらに5秒目で上段に「酢」を置いたので「『酢』+『イカ』=『スイカ』」が例示になるところまで分かります。

「答えも持ち物の中にある」と言われていたので、あとは少ない手札の中から「葉」を含む組み合わせを探せばOKです。
「葉」+「串」=「白紙」、これを見つけて書いて押し、17秒という高速での解答を成立させました

このあとのインタビューで「買ったものをそのまま使うのは単純すぎる」と偉そうに発言しましたが、実際に謎を解く過程でこの思考を経由したわけではありません
実際は「は」で始まる(あるいは終わる)アイテムを先に探して「白紙」を見つけ、その後「『白紙』が答えになるならば『くし』もないといけない」「そういえば焼き鳥の『串』があるなあ」という思考を辿りました。

下段の問題が出る前に解答するのは相当リスキーなのですが、この時の僕はかなりの確証を持って(80%ぐらいは正解だろうと思って)解答しています。
その根拠が先ほど述べた「買ったものをそのまま使うのは単純すぎる」です。

もし何のひねりもなく持ち物がそのまま使われる(例えばAKI-MARUが「薪」を持っていて答えが「葉巻」になる)のだとしたら、この謎は単純な情報整理パズルになってしまいます。
これがダメというわけではないですが、やや面白みに欠けますし、みんなが同じようなタイミングで正解する可能性が高くなってしまいます。
RIDDLERがそんな単純な問題を出題することはないでしょう。

一方、「焼き鳥」が「串」に化けるのは発想の飛躍を一つ要求する、いかにも「謎解き」っぽいアクションです。
解説の際に「おお~」ともなりますし、気付くタイミングが人それぞれになるので勝負としても魅せやすい。
いかにも「ありそう」な仕掛けだったので、「これしかない」と思ってLOCKボタンを押しました。

ちょっとした裏話

  • Twitter等を見ていると「『葉っぱ』と『串』だったので九九かとおもった」というコメントがよくありましたが、実際に今田さんがこのことについて言及し、松丸さんが驚くという一幕がありました。僕は一切気づきませんでした。
  • VTR開始前に松丸さんが「尊敬するクリエイターからの出題です」とやけに「クリエイター」の部分を強調していたので、秋山さんのクリエイターズ・ファイルなんだろうなあと予測してました。本当にその通りのものが始まって笑ってました。

ファーストステージ3問目(AKI-MARU その2)

続いては3問目、再びAKI-MARUからの出題です。

1問目、2問目と、ここまで僕がいかにして早く謎を解き、どれほどの確証を持って解答提出をしたのか……という話をしてきましたが、ここではその話はしません

というのも、放送を見てもらうと分かる通り、僕はこの問題を超低速で解答しているからです。
前回の記事で「低速での解答は誤答とほぼ同じ扱いになるため避けなければならない」旨のことを言っているので、この動きはいかにも失敗のように見えるかもしれません(実際、5点しか入ってません)。

ですが、この行動はわざとです。
このラウンドにおいて僕は速解きを拒否し、ゆったりと謎を解くことを選択しました。

ファーストステージ2問目終了時点での結果を思い返してみましょう。
この時点での僕の残り秒数は214.9秒であり、敗退ラインの6位とは79.4秒差。
そしてこの問題の制限時間は80秒です。

つまり、この時点で79.4秒差を逆転するためには0.6秒以内の解答が必須。
解答を書く時間が必要になることを踏まえると、この逆転は現実的に不可能です。
「何も書かない」が正解になるめちゃくちゃトリッキーな謎だったらまだ分からないんですが、今回はちゃんと「2文字の動物が答え」と明言されていたので

つまり、この問題を僕がどう解こうが(あるいは解かなくても)少なくとも3人には勝てる=上位5人には入れることが確定しています
ファーストステージでの目標はあくまで「上位5人になること」ですので、ここで速解きを行う必要は全くありません
映像をゆったりと眺め、そういう風な情報の出し方をするんだなあ、面白いなあと思いながら、解答が確定するまで待ち、100%の正答を送りました。

ちなみに、誤答してもいいのであれば最初に攻めて魅せプを狙うという選択肢もあったとは思うんですが、2問目でまあまあ攻めた解答をしていたせいで気力が尽きていたことと、どうせなら全問正解したうえで次に行きたいという思いが強かったので、ここは完全に守りを選択しました。
と、ここまで偉そうに戦略を語っていますが、ペンの色だけで察するところまで考えは至りませんでしたし、最後の最後までAKI-MARUの背中の文字を「ナ」だと思っていたので実はそもそも解けない状態だったらしいです。最後はちょっと焦ってるのが分かるかと思います

「速解きの大会で速解きをしないなんて……」と言われるかもしれませんが、状況を判断して行動に緩急をつけるというのは重要なテクニックのひとつだと思っています。
持久走で全力疾走するのが悪手なのと同じです。
撮影の待ちなども含めるとかなり長丁場の大会でしたので、ここで焦らずに体力を温存して臨めたことは僕にとっては大きなアドバンテージでした。

ちょっとした裏話

  • 先述の通り僕は安全を確認したうえで守りを選択したのですが、この真逆を行ったのがおいたくさんです。ある程度安全圏だったのにも関わらず2秒での解答を決めて正解するというただただカッコいいプレイング。控室で全員が称えていました。世の中には持久走で全力疾走できる人もいる……
  • 僕が今回のように状況を意識した立ち回りを心掛けていたのは、伊沢拓司さんの著書「クイズ思考の解体」に影響を受けてのことです。この本の第三章は、早押しクイズでの「押し」は選手のコンディションを含めた様々な要素からなる複雑系によって決まるということをまとめた内容で、非常に興味深いトピックとなっていました。僕は競技クイズのプレイヤーではないですが、自身の得意分野である謎解きにこの思考を落とし込み、ある程度実践できたことを誇りに思っています。
  • 放送では「ゴウケン」「カナ」という嘘RIDDLER社員が登場しますが、現場の映像ではもう何人かいました。真っ先にうんてんさんが犠牲になってて面白かった
  • 控室でみんな「長宗我部亮吾使わんのかい!」って言ってました。ムービー系の謎解きではさしたる記憶力は要求されないとみて、メモを控えて頭で考えるだけにした方が良いのかもしれませんね。実際出題VTRだけで解けるようになってますし
  • AKI-MARUさん謎の解説うまくて笑う
  • 俺、座りの姿勢ええな

ファーストステージで僕が考えていたことについて説明していきました。
放送では「すごい」の一言で処理されて伝わりにくい、プレイヤーの行動の意図についてある程度理解していただけたなら幸いです。

続いての記事はこちら。

セカンドステージ前半の、あのヤバい謎の話をします。

ではまた。