言葉遊び大百科:回文
「これで一通り回ったかな」
「伊勢神宮には初めてきたけど良いところだね……そういえば、お腹が空いてきた」
「何か食べたいものとかある?」
「そうだね、やっぱり……」
「参道制覇後は伊勢うどんさ!(さんどうせいはごはいせうどんさ)」
回文とは?
文章をひらがなで書いた時に、前から読んでも後ろから読んでも同じになるものを回文と呼ぶ。
有名なものだと、「しんぶんし」や「トマト」は単語そのものが回文になっているし、「竹藪焼けた(たけやぶやけた)」「私負けましたわ(わたしまけましたわ)」などは回文の「ベタ」である。
Twitterでハッシュタグ「#回文」などで検索すると、ベテランからアマチュアまで、様々な人が作った回文を無数に見ることができる。
「逆から読んでも同じ文」という制約しかないため、別に文章が意味を成していなくても回文と呼べてしまう。
2chの有名なコピペに、
まさかこの文章が回文になるなんて吃驚だろう?でも現にンゲ!モデウロダリクッビ、点なる何、ンブいかが?うょしん部のコカ様〜
というものがある。
あくまでネタであり、後半は全く意味のない文字列であるが、一応回文の条件は満たしている。
とはいえ、やはり文章として成立している回文の方が評価は高くなる。
「芸術点」のようなものだろうか。
例えば、
数学と理科ばかり解くガウス
というのは10年以上前から存在する有名な回文であり、今でもTwitterでたまにバズっている。
古いネタであるため、初出がどこなのかまでは分からなかった。
回文の作り方
左右対称に文字が並ぶようにすればよいだけので、回文を作ること自体は簡単である。
以前に私が謎解きWikiに寄稿した例を引用すると、
1. 回文に入れたい単語を決める(例:回文)
2. その単語を逆読みしてみる(かいぶん→んぶいか)
3. 逆読みした単語が文章として意味が通るように文字を付け加える(「んぶいか」に「ぜ」を足して「ぜんぶいか」にするとよさげ)
4. これを1で決めた単語と上手くつなげて対称に配置する(「回文全部いか」で対称になる)
5. 3~4を繰り返して、お好みの文を作り上げる(「あかん回文全部遺憾かあ」とか)
6. 句読点などの約物を加えて整える(「あかん回文、全部遺憾かあ……」とかどうよ)
回文 – 謎解きWiki
という感じである。
こうすればいくらでも回文を量産することができるが、上手い回文はその中のほんの一握りである。
自身の言語センスと運も絡んでくる。
回文の類似概念
「逆から読んでも同じ文」というのが回文の定義であるが、これをさらに拡張した概念が存在する。
2-回文・幸いさ
2つの回文を並べて構成される文のことを「2-回文」と呼ぶ。
また、これのさらに拡張概念にあたるのが「幸いさ」である。
「幸いさ」は「ある文字列を作るために連結する最も少ない回文の値でその文字列の長さを割った値」として定義される。
元ネタは2022年度の大学入学共通テストの情報関係基礎である。
例えば「ミニトマト」という単語であれば、文字列の長さが5であり、「ミ」「ニ」「トマト」という3つの回文の和として表せるため、幸いさは5÷3≒1.7となる。
純粋な回文の幸いさは、その文字列の長さと同じになる。
より文字列が長く、より回文っぽい方が幸いさは大きくなる。
偽回文
いかにも回文っぽい見た目をしているのに回文になっていないものを、偽回文や回文ならずと呼んだりする。
回文ではないのにも関わらずわざわざ世に出てくるあたり芸術点の高いものが多く、それゆえに「もったいない」と思える作品群である。
また、中には回文だと思って作ったのに実は回文になっていなかったというような、勘違いが原因になっている例も存在する。
上記のサイトで詳細な分析がなされている。
たいこめ
「たいこめ」とは、逆から読むと別の文として成立する文のことである。
名前の由来がかなり性的なものであるため、検索等なされる場合は要注意。
もっとも簡単な例に、「クルミ」を反対から読むと「ミルク」になるというものなどがある。
先ほどの「2-回文」の例に倣えば、「1/2-回文」とも言えるだろう。
「たいこめの会」なるものが存在するようだ。
現在は活動が無期限休止中となっているが、HPにはわりと最近の時事を扱ったたいこめが掲載されている。
自由な回文
ここまで仮名文字の回文を扱ってきたが、もちろん仮名文字に限らず「逆から読んでも同じ」ものは存在する。
例えば、食品メーカーの「山本山」のキャッチフレーズ「上から読んでも山本山。下から読んでも山本山」に代表される漢字回文がある。
他の例だと「三遊亭遊三」などが該当する。
日本語以外でも、英語なら「madam, I’m adam」、ラテン語だと「SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS」といった回文が知られる。
ほかにも、濁点・半濁点の取り外しを許可したり、「ー(長音)」を「一(いち)」と呼んだりすることで、回文の自由度を上げたものもみられる。
回文数
数字の並びが回文になっているものを「回文数」と呼ぶ。
文字の並びに着目する、という点であまり数学的ではないイメージだが、実際は色々面白い性質を持っているようで、入試問題や数学オリンピックの問題のテーマにもたびたびなっている。